腰痛のある人のうち筋・筋膜性腰痛は7~8割を占めています。
筋・筋膜性腰痛は鍼灸治療の適応症の中でも最も効果のある疾患の一つです。
過度の運動や長時間同じ姿勢を続けていると、筋肉の疲労や緊張が生じ、筋肉の中を走行している血管が圧迫され血液循環の滞りが起きます。血液循環の滞りが生じますと、筋肉に老廃物などの痛みの素となる物質がたまりTP(トリガーポイント)ができ、痛みが現れます。このような状態で筋肉が運動を行えば、筋繊維はすぐに傷つき再びTPができ、痛みが起こります。そのため痛みが慢性的になり、筋肉の緊張がさらに強くなり、より大きなTPが出来るというような悪循環となります。
筋・筋膜性腰痛の原因になっている筋肉のTPに手技療法、機械治療、もしくは鍼を使って直接刺激をします。鍼でTPを刺激することで、大きな筋弛緩(筋肉が緩む)を得ることが出来、また血液循環が改善し発痛物質が流れていきます。
● 腸腰筋
腸腰筋は腰椎と大腿部をつなぐ筋肉で、主に大腿を引き上げる(膝をお腹に近づける)作用があります。腸腰筋が緊張するとイスに座るときに浅く腰を掛けるようになります。激しいスポーツをしている若者や樽みたいにお腹が出張った(ビール腹)患者さんで腰痛を訴えている方に多くみられます。長時間の座位で腰が痛くなる方などは腸腰筋が原因の筋・筋膜性腰痛の可能性が高いです。
● 腰方形筋
腰方形筋は骨盤と腰椎の横突起および第12助骨をつなぐ筋肉で、腰椎をしっかり安定させる作用があります。痛みを認識する部位としては中央より脇っ腹に痛みを感じることが多く、この筋が緊張すると寝返りなどの動作で痛みが発生します。横向きでエビのように「く」の字で寝ることが楽な方などは腰方形筋が原因の筋・筋膜性腰痛の可能性が高いです。
● 脊柱起立筋
脊柱起立筋は背中で背骨を挟んで縦に伸びる2本の筋肉です。脊柱起立筋は背中を伸ばす(後屈させる)作用のある筋肉です。脊柱起立筋が緊張すると背中を丸めるようになります。そして、イスに座ると深く腰を掛け肘を膝にあてて背中を丸めるようにします。この背中を丸める姿勢は立っていても、座っていても同じで一見姿勢や行儀が悪いようにも見えます。背中を常に丸めている方や洗顔時に腰が痛くなる方などは脊柱起立筋が原因の筋・筋膜性腰痛の可能性が高いです。
● 中殿筋
中殿筋は片足立ちした時にふらつかないように骨盤を安定させる作用がある筋肉です。中殿筋が緊張するとイスに座っているときに足を組むようになり、お尻から太ももの裏側にかけてだる痛い鈍痛が現れます。座っている時に無意識に足を組んでしまう方やお尻がだる痛くなる方などは中殿筋が原因の筋・筋膜性腰痛の可能性が高いです。
※下記の筋肉以外にも腹直筋、多裂筋、大殿筋、小殿筋などが原因となる筋・筋膜性腰痛があります。